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虚偽説明で賠償命令

毎日新聞
2020年1月27日(月)20時06分

中1女子への暴行巡るアンケート、「ないと虚偽説明は違法」熊本・長洲町に賠償命令

 熊本県長洲町立中で2012年に男子生徒から授業中に暴力を受けて精神障害を負った当時1年の女子生徒(現在20代)の両親が、担任がクラスメートのアンケート用紙を廃棄したことなどは違法として、町に計330万円の損害賠償を求めた訴訟の判決で、熊本地裁は27日、町に計11万円の賠償を命じた。アンケート結果などが記載されたメモについて、前教育長が生徒側に「ない」と虚偽の説明をしたのは違法と判断した。

 判決によると、女子生徒は12年2月の授業中に同級生の男子生徒から頭をたたかれるなどの暴行を受けて左足打撲などのけがをし、その後体調を崩して入退院を繰り返し、うつ状態や心的外傷後ストレス障害(PTSD)などと診断された。

 担任は直後に、クラスメート(約30人)に男子生徒から暴力を受けたことがあるかを問うアンケートを実施したが、まもなく廃棄。一方、担任や校長らがアンケート結果などを記載したメモが学校に保管してあり、メモにはクラスメートが受けた暴力の内容が具体的に記載してあった。

 生徒側は13年6月ごろからアンケートに関する文書の開示を再三求めたが学校側は応じなかった。生徒側は15年10月に町個人情報保護条例に基づきアンケートと関連文書の開示を求めたが、前教育長は「既にアンケート用紙は廃棄され、取りまとめた報告書もない」など虚偽の説明をし、メモを開示しなかった。

 小野寺優子裁判長は「事実に反する説明によって事件の状況や原因を探求するための情報を収集する利益を害された」と判断し、町に賠償を命じた。

 一方、判決は、メモの内容は両親が担任から受けていた口頭説明から大きく逸脱しておらず「利益が侵害された程度は大きいとは言いがたい」と判断。アンケートの廃棄は、記名方式だったことなどを理由に違法性は認められないとした。

 判決を受け、両親は「町教委や学校は『自分たちに都合の悪い証拠は隠したり廃棄したりすればいい』という考えが間違っていることを自覚してほしい」とコメント。町教委は取材に「判決内容を検討中なのでコメントできない」と答えた。

 熊本県長洲町立中の1年だった女子生徒は2012年2月、授業中に突然、男子生徒に後ろから左耳付近をたたかれるなどの暴行を受けた。女子生徒はかけていた眼鏡が飛び、うずくまって動けなくなった。その後はショックで入退院を繰り返し、自傷行為をしたり「死にたい」と口にしたりすることもあった。8年たった今も心の傷は癒えていない。

 女子生徒は以前にも男子生徒からすれ違いざまに制服の中に手を入れられたことがあった。こうした経緯も踏まえ、両親は「他の生徒も暴力を受けていたのではないか。学校がきちんと対応していれば防げたのではないか」と考えた。

 「真相を知りたい」と願った両親は、何度も学校にアンケート結果の開示を求めた。判決によると、校長は両親に説明するためのメモも作成していたが、両親が弁護士に相談していることを理由に町教委がメモを渡さないよう校長に伝えていた。女子生徒側の情報公開請求に対しても前教育長はメモの存在を認識しながら「ない」と虚偽の説明をした。

 学校で事件や事故が発生した時、クラスメートらへのアンケートは事実解明のために不可欠な証拠となる。児童生徒の自殺について争われた別の複数の訴訟でも学校側によるアンケート廃棄や、結果説明の不十分さを「調査報告義務違反」と判断し、自治体側に賠償を命じる判決が出ている。

 今回の判決について両親の代理人の遠矢洋平弁護士は「アンケート廃棄を違法と判断しなかったのは問題だが、存在する証拠を隠したりうそをついたりしてはいけないと示した点は評価できる」と話した。
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